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10月のもとで

モスクワから

相模原事件。「不名誉な死」なのか。

19人が死んだ。戦後史に残る大事件だ。

 

しかし、警察は被害者名を発表しないという。

 

マスコミの建前。「実名発表しないなんてけしからん。個々人の顔の見える被害を明らかにしないと、事件の悲惨さが伝わらず、再発防止につながらない。発表しないなんて恣意は許されない。警察は何様だ」

 

マスコミ幹部の考え。「抽象的な被害だと読者は読まない。視聴者はみない。お涙ちょうだいのストーリーつくれない。でもまあ障害者だし、ストーリーつくれないし、しゃあないか」

 

マスコミ現場の考え。「実名発表しないと取材が楽になる。だって、顔写真とか取らなくていいんでしょ。嫌がる家族に取材しなくていいんでしょ。お涙ちょうだいがなければ、こんな事件早々に終わるし、しんどい取材しなくていい」

 

今回のケースは、「被害者が障害者。だから、世間的に特殊で、同情をひかない」となるので、取材する側はとても楽だ。前例として、大阪の個室ビデオ屋放火事件と、新宿歌舞伎町火災。前者の客の被害者はいうまでもないが、後者の被害者の大半はオッパプ嬢だった。両方とも、「報道すると、被害者の名誉が傷つく」という言い訳のもとに、被害者取材をほとんどしなかった。「不名誉な死」というやつだ。

 

だって、障害者でしょ、だって風俗で働いてんでしょ、だってアダルトビデオ見て抜いてたおっさんでしょ。これが大衆心理を反映したマスコミ心理。「障害者の人となりを報道すると、被害者の名誉をそこなう」。ひどい差別だけど、警察もめんどくさいし、マスコミもめんどくさいから、実名割るためにがんばらないだろう。

アルジェリア人質事件は、政府が発表しなくてもマスコミが被害者を割り出したが、今回はそこまではしない。

「だって障害者でしょ」「施設に入ってたんでしょ」。マスコミ心理は、あなたの心理だ。

 

今回も、死者数のわりに、すぐ忘れられる事件になるだろう。個室ビデオ放火のように。ふつうの人、読者視聴者やその子どもが被害者になる可能性のあった秋葉原の無差別殺傷事件や池田小事件とは、決定的に異なる。

 

まー、障害者業界では、100年先も語り継がれるんだろうが。同和業界で、明治におこった事件がいまでも語り継がれるように。

 

とはいえ。障害者の親はある意味特殊というか、子どもを思う気持ちの表現法が特異な人がけっこうな割合でいるので、「わたしの子どもはこんなだった」「殺されたのはおかしい」と声高に叫び、それがマスコミに取り上げられる可能性はある。でも、それが、大きな報道になることはないだろう。