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10月のもとで

モスクワから

天皇退位

久しぶりの大ニュース。日本時間14日午前4時現在で、各報道機関のネットニュースを読んだ限りでの感想。

 

始まりはNHKの午後7時のニュース。ここでのトップニュースで「退位意向」と放った。「天皇が近く、自分の意見を国民に公表する方向で調整」。あわてた各社は一斉に後追い、毎日、産経、日経は「天皇が自分の考えを公表へ」とNHKと同じトーン。一方、朝日、読売は「意向がある」のは載せたが、その意向を「公表する」かどうかは言及していない。

一方、当の宮内庁はNHKの報道について完全に否定。「宮内庁で退任を検討していない」のみならず、「天皇はそうした気持ちを持っていない」とまで言い切った。

 

現時点の事実としては、天皇自身はそう思っている。でも、そうした意向を正式に公表するかどうかは、宮内庁内でまだ組織決定していない、というところなのだろう。で、天皇の意向に沿いたい派閥の宮内庁内か官邸内の誰かがNHKにしゃべって、報道させて、皇室典範改正議論をさせようとした。

  

たとえ話。

我が家の老飼い犬・アッキーは、長年飼い犬暮らしをやってきて、もう疲れたから野良犬になりたいと思ってる。12人家族の我が家。でも、犬語をわかるのは、おじいちゃんと10歳の孫だけ。おじいちゃんはアッキーの気持ちはわかっているけど、アッキーに出ていってほしくない。死ぬまでペットでいるのが我が家の伝統だったんだから。ペットの分際で「野良犬になりたい」なんて生意気いうな、と思っている。

一方、孫はアッキーがかわいそうなので早く野良犬にしてあげたい。家庭内の権威は圧倒的におじいちゃんが上だ。おじいちゃんを出し抜くために、孫が近所に「アッキーは野良犬に帰りたい、と言ったんだ」と言いふらした。「もうすぐアッキーが自分でそう言うよ!」と。

 

別のたとえ話。

渥美清はもう引退したいと思ってる。でも、プロデューサーは「あのさ、あんたには引退する権利なんかないの。死ぬまで、寅さんやってくんなきゃ。だいたい、あんたの財産なんかないのよ、やめてこれからどうすんの。財産はぜんぶ、松竹のものよ」。渥美に心酔する付き人は、本人に無断で、週刊誌に話し、週刊誌は「渥美清、引退へ。近く、記者会見」と掲載させた。一方、松竹は「引退したいなんて、渥美清本人はまったく思っていない。会見なんか開くはずがない。契約は死ぬまで残っている」。

 

犬の意向は、どうでもいい。だって、ペットなんだから。ペットに発言権はなく、そのペットの「意向」をかさに、なんらかの物事を進めようとするのは誤っている。孫の行動は誤りだ。「アッキーの好きにさせようよ」は、憲法が禁じている、のだ。

 

とはいえ。憲法による建前の制度と現実は異なる。現実世界では、天皇の「意向」なるものは大きな影響力を持つ。飼い犬アッキーは言葉を話せないが、アキヒトは言葉を話せる。NHKが報じるように、ほんとにアキヒト本人が自分の考えを公表すれば、NHKは歴史に残る大スクープになる。でも、それは、制度によって禁じられているはず(というのがわたしの考え)。

 

なので、NHKや、それに引きずられた毎日、産経、日経は飛ばしで、結果的に誤報になると睨む。言葉をかえると、NHKにリークした側が権力闘争で負けると読む。渥美清より、松竹が勝つ。孫より、おじいちゃんが勝つ。ニュースで大事なのは「ペットの気持ち」ではなく、実際の今後の結果、だ。

 

さて、どう転ぶか。